中小企業診断士2次試験には、いろいろな解き方があります。
設問を先に読む。SWOTで与件文を整理する。設問と与件文を対応させる。一次知識を使って与件文を解釈する。社長の想いを外さない。設問間の一貫性を意識する。
私自身は受験生時代にAASを受講していたので、かなりAASの影響を受けています。その後、工程ドリルを作るために過去問を分解したり、他の予備校や教材の解法を調べたりしているうちに、別々に聞いていた話が少しずつつながってきました。
今回は、それを自分なりに一度整理してみます。
直前期の得点に直接つながるような話ではありません。ただ、2次試験で何をやっているのかを少し引いて見ると、4つの事例、設問、与件文、一次知識の関係が見えやすくなる気がしています。
まずは、現在の状況を整理する
まず、AASで教わった「SWOT+社長の想い」から考えてみます。
SWOTで整理しているのは、事例企業を取り巻く外部環境や、企業が現在持っている強み・弱みです。これを企業の現在の姿、つまりAs-Isと考えてみます。
一方、与件文には「今後は〜したい」「〜を目指している」といった記述が出てくることがあります。AASでいう「社長の想い」です。こちらを、企業がこれから目指す姿であるTo-Beと考えてみます。
かなり単純化すると、事例企業を
As-Is(現在の姿)
↓
To-Be(目指す姿)
という関係で見ることができます。
受験生だったころは、「SWOT+社長の想い」を一つの解法として使っていました。今になって考えると、企業を見るうえでは自然な組み合わせだったのだと思います。
現在の状態だけを見ても、何を変えるべきかは決まりません。どこへ向かいたいのかがあって、現在との差に意味が生まれます。
その間に、問題と課題がある
ここに「問題」と「課題」という考え方を重ねてみます。
問題と課題にはいくつかの定義がありますが、ここでは、
問題:現在の姿と目指す姿とのGap
課題:そのGapを埋めるために取り組むこと
と置いてみます。
たとえば、現在は仕事が熟練社員に集中している。一方、将来に向けて若手にも技術を承継し、組織として継続的に仕事ができる状態を目指しているとします。
現在と目指す姿にはGapがあります。そのGapに対して、技能承継を進める、OJTの仕組みを整える、といった取り組みが必要になります。
すると、
As-Is → 問題(Gap)→ 課題 → To-Be
くらいの形で見ることができます。
現実の企業経営がこんな一直線に整理できるわけではありません。ここでは、2次試験の構造を考えるために単純化しています。
同じ企業を、いろいろなレイヤーから診る
As-IsからTo-Beへ向かうために考えることは、一つではありません。
経営戦略もあれば、組織・人事、マーケティング、生産、財務もあります。
2次試験では、これらが事例ⅠからⅣに大きく分かれています。
- 事例Ⅰ:組織・人事
- 事例Ⅱ:マーケティング・流通
- 事例Ⅲ:生産・技術
- 事例Ⅳ:財務・会計
ただ、実際の設問はこの4分類だけでは整理できません。
たとえば事例Ⅰでも、環境分析を求める設問があり、経営戦略を問う設問があり、組織や人事施策まで具体化して問う設問があります。
同じ事例企業を扱っていても、設問によって見ているレイヤーが違います。
しかも、それぞれは独立していません。外部環境や内部環境を踏まえて戦略を考え、その戦略を実現するための組織を考え、その組織を動かすための人事施策を考える。
そう考えると、各設問は、同じ事例企業がAs-IsからTo-Beへ向かう過程の一部を、異なるレイヤーから切り取って問うている、と見ることができます。
だから、設問同士も完全には独立していない
AASでは、事例全体の一貫性を意識するように教わりました。
第1問で環境分析、第2問で経営戦略、第3問で組織、第4問で人事を聞かれていたとしても、それぞれ別の会社について答えているわけではありません。
同じ会社について答えています。
経営戦略とつながらない組織を提案したり、組織とつながらない人事施策を提案したりするのは、企業全体を考えると不自然です。
この見方をすると、AASで教わった「環境分析の設問は後回しにする」という解き方も理解しやすくなります。
最初にS・W・O・Tを拾って答案を確定させるのではなく、他の設問も考えてから戻る。この企業がどこへ向かおうとしているのか、どんな戦略が必要なのかを踏まえると、その企業にとって重要な強み・弱み・機会・脅威も変わって見えます。
単に「第1問を最後に解く」という手順として覚えるより、私はこの方が納得しやすいです。
一次知識は、企業を見るためのレンズなのかもしれない
2次試験では、「一次知識を使って与件文を読む」という話もよく出てきます。
以前、与件分析の方法を調べたとき、TBCでは設問を一次知識で抽象化し、与件文を使って具体化する「具体→抽象→具体」という考え方が使われていました。KECでも、一次知識を介して設問文や与件文を理解することが重視されています。
今回の全体像に当てはめると、一次知識は「企業を見るためのレンズ」のようなものと考えると、私には分かりやすいです。
組織の知識があるから、組織上の特徴や問題に目が向く。マーケティングの知識があるから、顧客、競合、提供価値という観点で企業を見る。生産管理の知識があるから、生産工程、在庫、標準化といった情報に意味を見いだせる。
同じ与件文でも、何を問われているかによって使うレンズが変わります。
一次知識は、答案に入れるキーワードのストックであるだけではなく、設問が求めるレイヤーから事例企業を見るためにも使っているのだと思います。
いろいろな話を重ねると、こう見える
ここまでを重ねてみます。

企業には、現在の姿であるAs-Isと、目指す姿であるTo-Beがある。その間にはGapがあり、それを埋めるために取り組むことがあります。
その企業を、環境分析、経営戦略、組織、人事、マーケティング、生産、財務など、いろいろなレイヤーから診る。そのとき、企業を見るためのレンズとして一次知識を使う。
2次試験では、それを4つの事例に大きく分け、さらに設問によって特定の部分を切り取って問うている。
AASを中心に、受験勉強で教わったことや、工程ドリルを作る過程で調べた他の解法をつなげると、私は今のところこんな全体像で2次試験を捉えています。
実際の企業診断では、必要な情報が与件文として用意されているわけでも、80分で答えを出すわけでもありません。
それでも、企業の現在を把握し、目指す方向との間にあるものを考え、それを複数のレイヤーから診る。2次試験が企業診断の試験であることを考えると、この構造はそれほど不思議ではない気がします。
分解したら、逆に全体が見えてきた
工程ドリルでは、答案ができるまでを「設問解釈→与件分析→骨子構築→答案作成」の4工程に分けています。
Step1の設問解釈では、設問が何を要求しているのかを分解します。その中には、「この設問では企業のどの部分を見るのか」という確認も含まれます。
Step2の与件分析では、設問要求を踏まえて与件文から必要な材料を探します。SWOTや社長の想いも、その材料を整理するために使います。
Step3では、その材料を使って設問への答えを組み立て、Step4で指定文字数の答案にします。
工程ドリルを作り始めたときは、80分の解答を分解して、一つずつ練習できるようにすることを考えていました。
ところが、過去問を工程ごとに分解していくと、設問、与件文、一次知識、事例全体の関係も以前より見えやすくなりました。
細かく分けてみたことで、逆に2次試験の全体像が見えてきたのかもしれません。
かなりAASの影響を受けています
ここまで自分なりの整理として書いてきましたが、私は受験生時代にAASで学んでいます。
「まず事例企業を診る」「SWOT+社長の想いで考える」「事例全体の一貫性を意識する」といった考え方は、かなりその影響を受けています。
当時は解き方として覚えていたことを、工程ドリルを作るために2次試験を分解していく中で、別の角度から理解し直している感じがあります。
なので、最後にAASに感謝を示して、この記事を終わろうと思います。
